らんま1/2の二次創作&日々の徒然なること…? |
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「あかね、料理上達したわよね~」
「ホント!? なびきおねえちゃん!」
「あんたに嘘言ってどうするのよ。まぁカレーだけだけど」
スプーンを口元に運びながらのなびきの言葉に、テーブルについていた者たちからの賞賛の声と、それに対して大きな頷きがあった。
皆が揃って食卓についた土曜の夕食時、用意されたカレーに大絶賛する家族。
たかが、カレー。
されど、カレー。
主婦業を営む者にとっては、数日は献立に悩むことがない簡単な素敵メニューであると思うが――
それを担当するのが"あかね"であることが、この家にとっての一大事であった。
実は今日、月に一度のカレーの日でカレーの日はあかねの担当だった。
天道家が――同時にそれは早乙女家でもあるが――最近作った、ルールであるそれ。
これは少し前ならば仰天するようなことであった。
というのも、あかねの料理ベタは前代未聞と言っていいほど破壊的であり、レシピ通りに作れば良いものの、アレンジというチャレンジ精神が料理を破滅に導いているとも言えた。
しかしさすがに同じものだが、回数を重ねれば、腕は目に見えて、否、舌で見えてというのか、美味しいと思えるものに当たるまでになり、見た目はともかく、カレーだけは美味しく作れるようになったのだった。
相変わらず、奇声を発しながらの料理だが。
「うんうん、本当にこのカレー、母さんにも食べさせてやりたかった……っ」
「うむ。あかねくんのカレーは日本一だ!!」
「早乙女くん……! うぅ…美味しいよ、あかねぇぇぇ!! 完治も間近だな!!」
「完治って病気じゃないんだから」
故に、以前ならば、あかねが料理する、となれば、父親筆頭にして用事が出来たりしたものだったが、今では全員揃って、その上、父は涙を流しながら嬉しそうに料理を頬張っていた。
「………失礼ね」
そんな父の過剰な反応と姉の言葉に、エプロン姿のまま台所の入り口付近に立つあかねは思わずムッとする。
だが、今までの料理のことを思い起こせば、それも仕方ないとも思えた。
そして皆が嬉しそうな表情で作った料理を口に運ぶ姿を見ていたら、すぐに顔がほころんだ。
「でも――皆が美味しいって……嬉しい!! これもおば様とおねえちゃんのお陰だわ。ありがとうございます、おば様、おねえちゃん」
小さくぺこりと頭を下げるあかね。
嬉しそうなあかねに、のどかとかすみはつられるように微笑み、そしてのどかは手にしていたスプーンを置いて立ち上がると、あかねの傍に立った。
「何言ってるの、あかねちゃんの努力だわ。私は何もしてないわよ」
「そうよ、おば様の言う通り。あかねの頑張りがこうして実ったのよ」
「美味しい物を食べさせてあげたい……あかねちゃんのそんな真剣な気持ちが料理に現れたんだわ。このカレー本当に美味しいわ」
すると、その言葉に、あかねが僅かに寂しげな表情を浮かべた。
それは僅かな変化だったが、傍に立つのどかは見逃さなかった。
のどかはあかねの肩に手を置くと、視線を移しながら、口を開いた。
「ねぇ、乱馬」
その視線の先には、息子、乱馬の姿がある。
まるであかねの気持ちを代弁するかの様なのどかの行動に、あかねはぴくり、と肩を揺らし、口を閉ざした。
そして、今まで一人静かに食べていた乱馬も、不意に母のどかに話を振られて、手をぴた、と止めた。
「乱馬もそう思うでしょ?」
二人に反して、にこりと微笑むのどか。
その言葉に、視線が乱馬に集中した。
「……んだよ……」
スプーンを無意味に動かしながら、憮然とした表情での言葉。
そんなまるで他の皆との違ったテンションに、あかねは小さくため息をついた。
のどかの言う、食べさせてあげたい――そんな相手と言えば、絶対に口にするつもりはないが、誰でもない乱馬であり、乱馬に一番美味しいと言って欲しい故のことだった。
いつもならば、必ず一言二言は憎たらしい言葉を放つのだが、今回は美味いもまずいも発しない乱馬。
そんな乱馬に、あかねは訳もわからない小さな不安を覚えていた。
「んだよ…じゃないだろう、乱馬!! お前というヤツは……!!」
何も言わない乱馬に痺れを切らした玄馬は、メガネを持ち上げながら、俯き加減でくっと唸る。
「あかねくん、本当にバカな息子で申し訳ない!」
「えっ!? お、おじ様!?」
「乱馬くん、あかねがここまで頑張るのは、君のためなんだよ」
「ちょ…っ!! お父さん何勝手なことっ……!!」
頭を下げる玄馬にあかねは困惑し、勝手なことを言う父にあかねは声を荒げる。
しかしいつもなら先頭立って反論する乱馬は、黙々とカレーを食べており、心ここにあらずといった感じだった。
(……どうせ、言葉なんて期待してなかったし)
そんなあかねの気持ちを知る由もない父二人は、勝手に盛り上がって乱馬を攻め――あかねは、一人反論し続けていた。
「ねぇ、カレー、美味しくなかった?」
「あん?」
道場で手合わせしていた際、不意に出来た沈黙時に、あかねは思い切って乱馬にそう切り出した。
期待してなかったとはいえ、やはり一番気になるのは乱馬の反応だった。
「別に……」
しかし相変わらず憮然とした態度で、いつもと違った曖昧な乱馬の反応にあかねはヤキモキする。
そんな風では、頑張った甲斐も、これから頑張る甲斐も、更に文句言う気力も出ない。
「じゃあ何でそんなに不機嫌なのよ。マズイならマズイって言えばいいじゃない。いつもみたいに……」
他のことならば強く出られるのに、料理は回数を重ねる度に、弱腰になっていくあかね。
最初は気にならなかったが、皆や乱馬の反応を見る度、努力しても無駄ではないのか、そんな風に怖気づいたこともあったからだった。
故に、正面に立つ乱馬を前に、その言葉を発した途端、俯き加減になっていた。
「…っ…ちげーよ!! カレー、美味かったっ……」
すると、慌てた様子で口を開いた乱馬。
その言葉にぱぁっと明るくなるあかねの気持ちだが、しかし、先ほどの反応を見ていたあかねにはイマイチ乱馬の言葉がピンと来ず――胴着の袖を両方掴みながら声を上げる。
「ほんとっ…!? なら、どうしてあんな反応なのよ……やっぱり本当はマズくてっっ!!」
「だから、美味かったって!! ただ――」
「……ただ!?」
「いや……びっくりしただけだっ……!!」
乱馬はあかねの急接近にぎょっとしたのか、思わず腰を引きながら「ほんとだよっ」と口を開く。
だが、そんな乱馬の様子よりも、料理への想いが先にあるのか、思わず前のめりになる。
すると乱馬は、美味すぎて、などと、いつもなら言えないような言葉を付け加えたと同時に、慌てたようにあかねの手を外そうとしていた。
「本当に?」
「ほ、ホントだ! 俺がそんな嘘言ったって得なんかねーだろ!! 大体、嘘を言ったら結局被害に合うのは俺――」
言いかけて、しまったとばかりに乱馬は口を噤んだが、あかねははっとしたような表情を浮かべると、思わず乱馬をじっと見つめた。
(……確かに――)
今まで、料理に関しては、素直な感想しかなかった乱馬。
そして口にしたその後の行動もわかり易かった。
そのことを思い出したあかねは安心すると、「ふふっ」と、笑顔が自然に零れていた。
「お、おい?」
目の前には困惑したような乱馬の姿。
必死になったり笑ったり――さぞかし不可思議な姿なんだろうと思ったが、一番言って欲しいと思ったひとから「美味しい」と聞けたのだから仕方がない。
「そっか、よかった」
あかねはその一言を残し、ふっと乱馬から離れる。
そして満足した答えが聞けた故か、手合わせする続きをすっかり忘れたまま、足取り軽く、道場を後にしていた。
……俺…マゾなのかも――そんな付け加えられた小さな呟きに気づきもせず。
「……あかねの飯、食えたの俺だけだったのに」
道場に残された乱馬は、独り言ちる。
美味いとなれば、己だけへの料理ではなくなるということに、つい先ほどの夕食で気づいた乱馬。
「マズイ」あかねの料理を食べる。
それは乱馬の専売特許。
故に、美味しくて嬉しいような寂しいような気持ちでカレーを食べていたなど、乱馬が誰にも言えるはずなかった。
そしてそれが憮然とした態度に繋がっていたことも。
とはいえ――
まともなのはカレーのみで料理の種類を見れば、先は長い。
専売特許であるそれは、まだまだ続くことは間違いないという、肝心なところに、乱馬は気づいてはいなかった。
「ホント!? なびきおねえちゃん!」
「あんたに嘘言ってどうするのよ。まぁカレーだけだけど」
スプーンを口元に運びながらのなびきの言葉に、テーブルについていた者たちからの賞賛の声と、それに対して大きな頷きがあった。
皆が揃って食卓についた土曜の夕食時、用意されたカレーに大絶賛する家族。
たかが、カレー。
されど、カレー。
主婦業を営む者にとっては、数日は献立に悩むことがない簡単な素敵メニューであると思うが――
それを担当するのが"あかね"であることが、この家にとっての一大事であった。
実は今日、月に一度のカレーの日でカレーの日はあかねの担当だった。
天道家が――同時にそれは早乙女家でもあるが――最近作った、ルールであるそれ。
これは少し前ならば仰天するようなことであった。
というのも、あかねの料理ベタは前代未聞と言っていいほど破壊的であり、レシピ通りに作れば良いものの、アレンジというチャレンジ精神が料理を破滅に導いているとも言えた。
しかしさすがに同じものだが、回数を重ねれば、腕は目に見えて、否、舌で見えてというのか、美味しいと思えるものに当たるまでになり、見た目はともかく、カレーだけは美味しく作れるようになったのだった。
相変わらず、奇声を発しながらの料理だが。
「うんうん、本当にこのカレー、母さんにも食べさせてやりたかった……っ」
「うむ。あかねくんのカレーは日本一だ!!」
「早乙女くん……! うぅ…美味しいよ、あかねぇぇぇ!! 完治も間近だな!!」
「完治って病気じゃないんだから」
故に、以前ならば、あかねが料理する、となれば、父親筆頭にして用事が出来たりしたものだったが、今では全員揃って、その上、父は涙を流しながら嬉しそうに料理を頬張っていた。
「………失礼ね」
そんな父の過剰な反応と姉の言葉に、エプロン姿のまま台所の入り口付近に立つあかねは思わずムッとする。
だが、今までの料理のことを思い起こせば、それも仕方ないとも思えた。
そして皆が嬉しそうな表情で作った料理を口に運ぶ姿を見ていたら、すぐに顔がほころんだ。
「でも――皆が美味しいって……嬉しい!! これもおば様とおねえちゃんのお陰だわ。ありがとうございます、おば様、おねえちゃん」
小さくぺこりと頭を下げるあかね。
嬉しそうなあかねに、のどかとかすみはつられるように微笑み、そしてのどかは手にしていたスプーンを置いて立ち上がると、あかねの傍に立った。
「何言ってるの、あかねちゃんの努力だわ。私は何もしてないわよ」
「そうよ、おば様の言う通り。あかねの頑張りがこうして実ったのよ」
「美味しい物を食べさせてあげたい……あかねちゃんのそんな真剣な気持ちが料理に現れたんだわ。このカレー本当に美味しいわ」
すると、その言葉に、あかねが僅かに寂しげな表情を浮かべた。
それは僅かな変化だったが、傍に立つのどかは見逃さなかった。
のどかはあかねの肩に手を置くと、視線を移しながら、口を開いた。
「ねぇ、乱馬」
その視線の先には、息子、乱馬の姿がある。
まるであかねの気持ちを代弁するかの様なのどかの行動に、あかねはぴくり、と肩を揺らし、口を閉ざした。
そして、今まで一人静かに食べていた乱馬も、不意に母のどかに話を振られて、手をぴた、と止めた。
「乱馬もそう思うでしょ?」
二人に反して、にこりと微笑むのどか。
その言葉に、視線が乱馬に集中した。
「……んだよ……」
スプーンを無意味に動かしながら、憮然とした表情での言葉。
そんなまるで他の皆との違ったテンションに、あかねは小さくため息をついた。
のどかの言う、食べさせてあげたい――そんな相手と言えば、絶対に口にするつもりはないが、誰でもない乱馬であり、乱馬に一番美味しいと言って欲しい故のことだった。
いつもならば、必ず一言二言は憎たらしい言葉を放つのだが、今回は美味いもまずいも発しない乱馬。
そんな乱馬に、あかねは訳もわからない小さな不安を覚えていた。
「んだよ…じゃないだろう、乱馬!! お前というヤツは……!!」
何も言わない乱馬に痺れを切らした玄馬は、メガネを持ち上げながら、俯き加減でくっと唸る。
「あかねくん、本当にバカな息子で申し訳ない!」
「えっ!? お、おじ様!?」
「乱馬くん、あかねがここまで頑張るのは、君のためなんだよ」
「ちょ…っ!! お父さん何勝手なことっ……!!」
頭を下げる玄馬にあかねは困惑し、勝手なことを言う父にあかねは声を荒げる。
しかしいつもなら先頭立って反論する乱馬は、黙々とカレーを食べており、心ここにあらずといった感じだった。
(……どうせ、言葉なんて期待してなかったし)
そんなあかねの気持ちを知る由もない父二人は、勝手に盛り上がって乱馬を攻め――あかねは、一人反論し続けていた。
「ねぇ、カレー、美味しくなかった?」
「あん?」
道場で手合わせしていた際、不意に出来た沈黙時に、あかねは思い切って乱馬にそう切り出した。
期待してなかったとはいえ、やはり一番気になるのは乱馬の反応だった。
「別に……」
しかし相変わらず憮然とした態度で、いつもと違った曖昧な乱馬の反応にあかねはヤキモキする。
そんな風では、頑張った甲斐も、これから頑張る甲斐も、更に文句言う気力も出ない。
「じゃあ何でそんなに不機嫌なのよ。マズイならマズイって言えばいいじゃない。いつもみたいに……」
他のことならば強く出られるのに、料理は回数を重ねる度に、弱腰になっていくあかね。
最初は気にならなかったが、皆や乱馬の反応を見る度、努力しても無駄ではないのか、そんな風に怖気づいたこともあったからだった。
故に、正面に立つ乱馬を前に、その言葉を発した途端、俯き加減になっていた。
「…っ…ちげーよ!! カレー、美味かったっ……」
すると、慌てた様子で口を開いた乱馬。
その言葉にぱぁっと明るくなるあかねの気持ちだが、しかし、先ほどの反応を見ていたあかねにはイマイチ乱馬の言葉がピンと来ず――胴着の袖を両方掴みながら声を上げる。
「ほんとっ…!? なら、どうしてあんな反応なのよ……やっぱり本当はマズくてっっ!!」
「だから、美味かったって!! ただ――」
「……ただ!?」
「いや……びっくりしただけだっ……!!」
乱馬はあかねの急接近にぎょっとしたのか、思わず腰を引きながら「ほんとだよっ」と口を開く。
だが、そんな乱馬の様子よりも、料理への想いが先にあるのか、思わず前のめりになる。
すると乱馬は、美味すぎて、などと、いつもなら言えないような言葉を付け加えたと同時に、慌てたようにあかねの手を外そうとしていた。
「本当に?」
「ほ、ホントだ! 俺がそんな嘘言ったって得なんかねーだろ!! 大体、嘘を言ったら結局被害に合うのは俺――」
言いかけて、しまったとばかりに乱馬は口を噤んだが、あかねははっとしたような表情を浮かべると、思わず乱馬をじっと見つめた。
(……確かに――)
今まで、料理に関しては、素直な感想しかなかった乱馬。
そして口にしたその後の行動もわかり易かった。
そのことを思い出したあかねは安心すると、「ふふっ」と、笑顔が自然に零れていた。
「お、おい?」
目の前には困惑したような乱馬の姿。
必死になったり笑ったり――さぞかし不可思議な姿なんだろうと思ったが、一番言って欲しいと思ったひとから「美味しい」と聞けたのだから仕方がない。
「そっか、よかった」
あかねはその一言を残し、ふっと乱馬から離れる。
そして満足した答えが聞けた故か、手合わせする続きをすっかり忘れたまま、足取り軽く、道場を後にしていた。
……俺…マゾなのかも――そんな付け加えられた小さな呟きに気づきもせず。
「……あかねの飯、食えたの俺だけだったのに」
道場に残された乱馬は、独り言ちる。
美味いとなれば、己だけへの料理ではなくなるということに、つい先ほどの夕食で気づいた乱馬。
「マズイ」あかねの料理を食べる。
それは乱馬の専売特許。
故に、美味しくて嬉しいような寂しいような気持ちでカレーを食べていたなど、乱馬が誰にも言えるはずなかった。
そしてそれが憮然とした態度に繋がっていたことも。
とはいえ――
まともなのはカレーのみで料理の種類を見れば、先は長い。
専売特許であるそれは、まだまだ続くことは間違いないという、肝心なところに、乱馬は気づいてはいなかった。
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