らんま1/2の二次創作&日々の徒然なること…? |
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乱馬を追って教室を出たあかね。
既に乱馬の背が小さくなっていたが、追いつこうとはせず、距離を保ったまま歩く。
先ほどひな子に名を呼ばれたが、すぐに諦められたのか、はたまた生徒が止めたのか、強く呼び戻す声はなかった。
授業は始まっており、周囲は静まりかえって、廊下に響くのはチョークの音と、教師の声のみ。
(……乱馬)
その背を、足音を立てない様にあかねは気をつける。
それは、乱馬に気づかれないためではなく、乱馬を追っていることを他のクラスの皆に気づかれたくないため。
気配を消すことを得意とする乱馬と違って、あかねは慣れていないため、必死だった。
廊下側の窓はすりガラスのため、誰が歩いているなどは見えないだろうが、それでも気を使いながら、早足の乱馬と距離が出来ない様にする。
乱馬はとっくに気づいているだろうが、振り返ることもないし、歩く速度を緩めない。
曲がり角に差し掛かった乱馬。
そこで背が見えなくなって、あかねは思わず走った。
「あ……」
案の定、消えたその姿。
行き先は何となくわかっているし、いなくなる訳ではないというのに、急く気持ち。
曲がり角のすぐ傍には階段がある。
あかねは迷わず上った。
一つ階を上がりきると、そこにあるのは鉄の扉。
(きっとここにいる……)
あかねは小さく深呼吸をし、扉を押した。
それほど力を必要としないはずの扉。
だが、その先に広がる外の世界から圧されているのか、簡単に開かない。
ぐっと、足を踏ん張り、身体を使う。
すると静かに開いたその細い隙間から、強い風が吹きすさんだ。
「っ……!」
扉を押し返され、思わず目を瞑りそうになるほどの風だが、何とかゆっくり目を細く開く。
その視界遠く、乱馬の姿が見えた。
乱馬は、柵に腕を乗せて、空を眺めている様。
あかねはほっと息を吐くと、更に力を込め、己が通れるだけ扉を開いて足を踏み入れた。
歩み寄ると、そこにあるのは不機嫌ですと言わんばかりの背中。
顔を合わせる気がないのか、無言のまま空を見つめたまま、背中を向けている乱馬の後ろにあかねは立つ。
人、一人分の距離をおいて。
「……乱馬。やっぱり屋上にいた」
「んだよ……」
「んだよ、じゃないわよ。授業サボって」
「そういうおめーもだろ」
「だって……」
「だって、何だよ」
「え……」
あかねはそこで初めて気づく。
何と言うつもりだったのか――何も考えておらず、勢いだけでやって来たことに。
僅かな後悔と、困惑を抱く。
多分――
呪泉郷のことを思い出した。
多分――
己のことを連想した。
多分――
それが快くなかった。
多分――
それは全て、あかねの想像だけでしかない。
別に乱馬が"それら"を持ち出して、怒った訳じゃない故に、それを以って言葉を紡いだりしたら、自惚れていると、バカにされるかもしれない。
様々な想いがあかねの脳裏に過ぎり、追って来ておいて、己に何が言えるのか、と思う。
(……ううん、でもここにいなくちゃいけないはず)
目の前の乱馬を覆うのは、"あの時"の負の気に似ている。
だから、と、言い聞かせる様に、あかねは頷いた。
あの時――呪泉郷での出来事は二人にとって、一時トラウマとも言えた。
意識を落としたのは、僅かな時間。
けれども、その出来事は、その瞬間の乱馬にとって、大きな傷となった。
そして、巻き込んでしまったという己自身への怒りへともなっていた。
そのせいか、しばらく乱馬はあかねを常に気遣い、小さな異変にも過剰に反応した。
日本に戻ってから、医師――幼い頃からお世話になっている東風とも相談し、一応激しい運動を控えたりして体調を見守ろうという程度に反し、乱馬は異常なほど過保護だった。
もちろん、茶化したりする、家族の前以外の場所でだが。
そんな中、検査もこなし、あかねの健康に東風の太鼓判が押されたその時、ようやく、取り戻した安心感。
それでも、何かのきっかけで思い出され、その度に乱馬は何かしら反応してしまう様だった。
大げさね、と思えど、もし、乱馬の立場が己であれば――想像するだけで、あかねは涙が浮かぶ。
乱馬が、こんな風に、同じ様に感じているのかはわからない。
けれども、あかねならば、これからという時間(とき)を描く中で、乱馬がいないなど、想像が出来ない。
こんなに己は弱かったのか、と、呆れるほど、あかねにとって、乱馬はなくてはならない存在だと、嫌という程身にしみており、誰よりも大切な男性(ひと)だった。
――乱馬が好き
今更、己の心中では気持ちを否定などしない。
だからこそ――
(……ここにいなくちゃいけないんじゃなくて――ここにいたい)
手を伸ばせば触れられう程、すぐ傍にいるというのに、何故だか遠く感じる存在。
例え心は通じ合ってなくとも、少しでも心を近づけたい。
(……今、何を感じているの?)
目の前にある大きな背中に触れることが出来たら――
あかねは一歩足を踏み出した。
既に乱馬の背が小さくなっていたが、追いつこうとはせず、距離を保ったまま歩く。
先ほどひな子に名を呼ばれたが、すぐに諦められたのか、はたまた生徒が止めたのか、強く呼び戻す声はなかった。
授業は始まっており、周囲は静まりかえって、廊下に響くのはチョークの音と、教師の声のみ。
(……乱馬)
その背を、足音を立てない様にあかねは気をつける。
それは、乱馬に気づかれないためではなく、乱馬を追っていることを他のクラスの皆に気づかれたくないため。
気配を消すことを得意とする乱馬と違って、あかねは慣れていないため、必死だった。
廊下側の窓はすりガラスのため、誰が歩いているなどは見えないだろうが、それでも気を使いながら、早足の乱馬と距離が出来ない様にする。
乱馬はとっくに気づいているだろうが、振り返ることもないし、歩く速度を緩めない。
曲がり角に差し掛かった乱馬。
そこで背が見えなくなって、あかねは思わず走った。
「あ……」
案の定、消えたその姿。
行き先は何となくわかっているし、いなくなる訳ではないというのに、急く気持ち。
曲がり角のすぐ傍には階段がある。
あかねは迷わず上った。
一つ階を上がりきると、そこにあるのは鉄の扉。
(きっとここにいる……)
あかねは小さく深呼吸をし、扉を押した。
それほど力を必要としないはずの扉。
だが、その先に広がる外の世界から圧されているのか、簡単に開かない。
ぐっと、足を踏ん張り、身体を使う。
すると静かに開いたその細い隙間から、強い風が吹きすさんだ。
「っ……!」
扉を押し返され、思わず目を瞑りそうになるほどの風だが、何とかゆっくり目を細く開く。
その視界遠く、乱馬の姿が見えた。
乱馬は、柵に腕を乗せて、空を眺めている様。
あかねはほっと息を吐くと、更に力を込め、己が通れるだけ扉を開いて足を踏み入れた。
歩み寄ると、そこにあるのは不機嫌ですと言わんばかりの背中。
顔を合わせる気がないのか、無言のまま空を見つめたまま、背中を向けている乱馬の後ろにあかねは立つ。
人、一人分の距離をおいて。
「……乱馬。やっぱり屋上にいた」
「んだよ……」
「んだよ、じゃないわよ。授業サボって」
「そういうおめーもだろ」
「だって……」
「だって、何だよ」
「え……」
あかねはそこで初めて気づく。
何と言うつもりだったのか――何も考えておらず、勢いだけでやって来たことに。
僅かな後悔と、困惑を抱く。
多分――
呪泉郷のことを思い出した。
多分――
己のことを連想した。
多分――
それが快くなかった。
多分――
それは全て、あかねの想像だけでしかない。
別に乱馬が"それら"を持ち出して、怒った訳じゃない故に、それを以って言葉を紡いだりしたら、自惚れていると、バカにされるかもしれない。
様々な想いがあかねの脳裏に過ぎり、追って来ておいて、己に何が言えるのか、と思う。
(……ううん、でもここにいなくちゃいけないはず)
目の前の乱馬を覆うのは、"あの時"の負の気に似ている。
だから、と、言い聞かせる様に、あかねは頷いた。
あの時――呪泉郷での出来事は二人にとって、一時トラウマとも言えた。
意識を落としたのは、僅かな時間。
けれども、その出来事は、その瞬間の乱馬にとって、大きな傷となった。
そして、巻き込んでしまったという己自身への怒りへともなっていた。
そのせいか、しばらく乱馬はあかねを常に気遣い、小さな異変にも過剰に反応した。
日本に戻ってから、医師――幼い頃からお世話になっている東風とも相談し、一応激しい運動を控えたりして体調を見守ろうという程度に反し、乱馬は異常なほど過保護だった。
もちろん、茶化したりする、家族の前以外の場所でだが。
そんな中、検査もこなし、あかねの健康に東風の太鼓判が押されたその時、ようやく、取り戻した安心感。
それでも、何かのきっかけで思い出され、その度に乱馬は何かしら反応してしまう様だった。
大げさね、と思えど、もし、乱馬の立場が己であれば――想像するだけで、あかねは涙が浮かぶ。
乱馬が、こんな風に、同じ様に感じているのかはわからない。
けれども、あかねならば、これからという時間(とき)を描く中で、乱馬がいないなど、想像が出来ない。
こんなに己は弱かったのか、と、呆れるほど、あかねにとって、乱馬はなくてはならない存在だと、嫌という程身にしみており、誰よりも大切な男性(ひと)だった。
――乱馬が好き
今更、己の心中では気持ちを否定などしない。
だからこそ――
(……ここにいなくちゃいけないんじゃなくて――ここにいたい)
手を伸ばせば触れられう程、すぐ傍にいるというのに、何故だか遠く感じる存在。
例え心は通じ合ってなくとも、少しでも心を近づけたい。
(……今、何を感じているの?)
目の前にある大きな背中に触れることが出来たら――
あかねは一歩足を踏み出した。
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