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らんま1/2の二次創作&日々の徒然なること…?
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あたしはただ、乱馬に1歩でも近付いて驚かせたかっただけ…それだけだったのに――

今更悔やんでも、悔やみきれない。伝えたい人物に、もう伝える術がないのだから






運命の迷宮






きっかけは、ある日の稽古後の乱馬から出た言葉だった――





「おめー、腕鈍ってんじゃねーか?」
「そ、そんな事ないわよ!」

そう否定しながら、しかしあかねは内心ギクリとしていた。

珍しく穏やかな日々が続き、そんな中、久々に乱馬と道場で一緒に稽古したあかね。
だが、あかねの繰り出す拳は一向に乱馬を捕らえる事は無く、全て軽く避けられていた。
様々な死闘を乗り越え、めきめきと力をつけて来た乱馬。
一方、日課としての修行のみを何とかこなして来ていたあかね。
そんな乱馬の経験値から比べれば仕方のない事だが、出会った頃のあかねから比べると右肩上がりとは言えず、確かに体が思うように動かなかった。
否、乱馬の言う通り、腕が鈍っているとあかねは感じていた。
手合わせ中のことを思い出しても、乱馬を捕らえるようとするが、目で追う事で精一杯であり、拳は半ばヤケクソの様に繰り出していた。
昔はここまで乱馬との差は無かったハズ――それがあかね自身の感想だったのだが、現在は歴然としている。

「おめー最近稽古サボッてばっかいるからなぁ?」

そんな気持ちを知ってか知らずか、乱馬は近くにあったペットボトルの水をこくりと飲むと、あかねに目をやった。

「調子が乗らなかっただけ!! そんな事ないわよ!!」

あかねは核心を付かれ、再びぎくりとするが、元来の負けず嫌いから、そう強気で言ってのけた。
すると乱馬はニヤリ、と笑みを漏らし口を開いた。

「明日から俺、修行に行くけど、差がまたまた大きく開いちまうぞ~!」

明日から冬休み。
それを利用し、また正月までという期限での修行故、そんなに長くないが、その短期間が乱馬の言う通りの差となる。
挑戦的とも言える言葉とその眼差しは、あかねの負けず嫌いの心に益々火を付けた。

「なっ……!! 見てらっしゃい! あたしだってあんたがいない間に、一段と強くなってるから!!!」

その言葉に乱馬は一瞬目を見開く。
それがどういう意味での表情か、思わず問おうとしたが――しかし乱馬がすぐ元の表情に戻すと楽しげに口を開いたため、機会を失った。

「期待してねーけど、ま、そう言ったからには頑張れよ。……さーて今日はこの位にしておくかなっと」

昼から始めた稽古だったが、気づけば日が落ちている。
ぐん、と伸びをする乱馬の言葉に、あかねも「そうね」と頷くと、二人は稽古を切り上げることにした。

腹減ったなぁ――と、零す乱馬。

「あんたって、稽古の時以外そればっかりね」
「うるせーなっ! 腹が減っては――だろ?」

くすくすと笑いながらの言葉に、乱馬は捻くれた口調で返すという、いつもの軽口を叩きながら居間へ向かう。

だがその時――あかねはその大きな背中を見つめながら、静かに新たなる決意をしていた。





⇒NEXT
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バタン! と勢い良く開けるドア。
乱馬と、遅れてあかねがその勢いにまかせて部屋に入ると、なびきの姿が視界に入った。
ベッドに寝そべって雑誌を読みながらせんべいをかじっていたなびき。

「くぉらっなびき! どういうつもりだ!!」

そのなびきに近づき、凄む乱馬だが――

「――どういうつもりはこちのセリフよ。レディの部屋にノックもなしで入って来るなんて」

乱馬の勢いに反して、冷静に言葉を返す。
この温度差にいきなり出鼻をくじかれそうになるが、しかし負けじと乱馬は口を開いた。
今回ばかりは自分たちが正しいという自信のもとであり、言い訳できるはずはないと。

「おめーにそんな礼儀必要ねー! いいからこれを見ろ!!」

強気でそう言うと、乱馬は持っていた雑誌をなびきの目の前に落とした。
何よ、となびきはため息交じりでその雑誌に視線を向ける。
するとしばし考え、まるでワザとらしく「あぁ~!」とぽんと、手を打った。

「これね? あらら、見つかっちゃったか――マニアック雑誌だったのに」

身を起こしてそのページを見つめたまま、なびきは肩を竦める。

「でも良く撮れてるでしょ?」

そして挙句、そうしれっと言いいながら微笑んだ。

「おねえちゃん!! そういう問題じゃないでしょ!」
「おまっ……反省の言葉はないのか!? 反省の言葉は!!」

全く悪びれていない言葉に乱馬とあかねは声を上げる。

「はぁ? どうしてあたしがあんたたちに反省しなくちゃいけないのよ」

だが、乱馬とあかねが責めたところで、なびきは気にしていなかった。

「どうしてじゃないわ! ちゃんと説明してよ! この写真、合成までして一体どういうつもりなのよ!! お陰であたしたち、大迷惑したのよ!!」
「はは~ん、なるほど……あの三人が見つけたのね。目ざとい……」

二人の責めよりも、何故ばれたのか――原因の方が気になるらしいなびきは、顎に手を当て頷いている。
その姿は、この期に及んで何かを企んでるらしくも見え――

「おねえちゃん!!」

お答えにならない言葉に、あかねが苛立つように名を紡ぐと、まぁまぁとなびきは制した。

「この写真、合成のわけないでしょ。大体そんなことしたらプロに一目でバレちゃうもの」
「……は? ま、まてよ! じゃぁこれ――」

記憶にありませんという乱馬の反応に、なびきは逆に呆れたように口を開く。

「ホント、あんたたち――って乱馬くんが覚えているはずはないわよね。ほら、いつものパターンじゃない。まぁ何度もあったら覚えてもないでしょうけど」

乱馬は首を傾げていたが、あかねはピンと来たらしく、真っ赤になった。

「この時のがホント良く撮れたのよねー。これ、猫になった後のアンタをあかねが押さえてるところ」
「なっ――……!?」

猫――唯一の弱点を強く差し出されたら、乱馬は猫に同化しようとし、記憶をそこから一切失う。
故に、写真を見たところでわかるはずもない。
いつも意識がないとはいえ――否、ないからこそ無意識に甘えているその姿は、自分の素直な姿を示しているようで、乱馬は真っ赤になった。
そしてあかねはあかねで、そんな乱馬を前に、まるで愛おしそうに見つめている。
無意識とはいえ、そんな自分の姿をなびきの写真で目の当たりしたのだ。
写真は気持ちを如実に語っていると言うのか――コメントし難い自身たちに、強気な姿は消え、微妙な空気が流れた。

「……ちょっと、やめてよ。いちゃつくなら別の部屋にしてちょうだい」

原因を作った張本人であるというのに、なびきは不機嫌そうにそう言い放つ。
そして問題は片付いたとばかりに、先ほど同様ベッドに沈み、雑誌に視線を落とした。

「じょ、冗談じゃない!!」
「ばっ、誰がいちゃつくか!!」
「それに前から言ってるけど、あたしたちでお小遣い稼ぎをしないでよ!」
「そうだ! 人の不幸を金にするなんて、なんてヤツだ!!」

なびきの姿に我に返り、そして責めるように言葉を紡ぐが、なびきはひらひらと手を振りながら、笑う。

「人聞き悪いわね。何言ってんの~。あんたたちの結婚資金になるんだから、感謝しなさいよ!」

そして、「あ、そうそう」と、なびきは思い出したように近くにあった財布を手にすると、一万円札を取り出した。

「謝礼よ。デートでもして来たら」

片目をぱちん、と器用に瞑るとその一枚のお札を乱馬とあかねに差し出すなびき。

「そういう問題じゃないでしょ!」
「まぁまぁ、いいじゃない。こういうものは快く受け取るのが礼儀よ」
「お前っ……」

無茶苦茶な言葉で言いくるめようとするなびきに、色々まだまだ言いたいことのある二人は、ジト目で睨みつける。
が、それを言わせることなく、なびきは遮った。
お父さんたちにこの本見せたらどうなるかしらね、と。



一枚も二枚も上手であるなびきに言葉を失う二人。
そう脅されては、結局打倒なびきなど出来ることもなく、一万円札を片手に、その部屋を出た。



酷い目には合ったが――
貰った折角の一万円。
故にその分け前を快く使おうとした乱馬とあかね。
だが――



タダより高いものはない



とはこのことか。
今度はデートの写真を撮られ、なびきは新聞部に売ると言う荒業を見せた。

渡された謝礼は倍以上になったであろうなびき。
抜かりない"あね"の姿に、乱馬もあかねも自分たちの甘さを痛感するしかなかった。



そして
幸せの瞬間――
写真は間違いなくその言葉を映し出していたが、それは二人の過ごす時間だけではなく、なびきの幸せのための瞬間という意味ではないかと、乱馬もあかねも感じていた。
以前なら、苦労していた鬼ごっこだが、しかし何度もやられれば――何より自身の過酷な修行の成果がここにも活かされていた。
幸か不幸か。


「……"晩飯"のためなのね」
ぽつり、と呟かれたあかねの言葉。
わかっていても、思わず出てしまったそれに、口元を押さえる。
「は? 何て言った!?」
が、屋根を飛び跳ねるたびに受ける前から風のせいか、その声は消えてしまったよう。
それは乱馬から返ってきた声の強さでわかる。
消え去った言葉に安堵しながら、あかねは口を開いた。

「別に! ねぇ、そろそろ下ろして欲しいんだけど!」

照れ隠しに出た言葉は、思った以上に不機嫌であったため、乱馬が軽く眉を顰めた。

「助けてやってそんな言い方しか出来ねーのか? 可愛くねーヤツっ!!」

言いながら、屋根から身軽に飛び降りると、まるで負担がないかのように、軽く着地する。
一体どうすればそんな風に――と思えるほどの、優しい振動。
と、同時に、ゆっくり下ろされ、しばらくぶりに地に足をつけ、そして並んで歩き出した。
荷物は相変わらず乱馬が、そしてあかねは渡された雑誌だけを持って。

かさかさと、袋の音をさせながら、歩く家路。

「ったく、何してたんだよ。皆待ちくたびれてたぞ」
「……だって、訳のわからない言いがかりつけられたんだもん」
「訳のわからない言いがかり? いつものことじゃねーか」
「そうだけどっ! でも今日のは・・・」

先ほどの憎まれ口を忘れたかのように、不思議そうにしている乱馬にそう言いかけて、あかねは一瞬躊躇った。
が、しかし隠したところで、日を改めてでも――下手したらすぐ晩にでも来るかもしれない三人。
それを思うと何も知らない乱馬へ、逞しい想像力のまま何か言われてはたまったものじゃない。
雑誌を乱馬に押し付けた。

「身に覚えの全くないこと!!」

ページを開いたまま胸に押し付けられたそれを乱馬は受け取ると、その見開きに視線を落とす。
そして固まった。

「げぇっ!!何だこれっ!?」

足を止め、目を見開いている乱馬は、あかねに視線を移す。
それを受けて、あかねは思い切り首を振った。

「し、知らないわよ!! 大方おねえちゃんが、合成とか何かしたんでしょ」
「なびきのやつ……」

文句を言いながら、乱馬は雑誌をくいるように見つめると、「おい……良く見ろよ」と、あかねの元にその雑誌を戻した。

「え?」

どこのことかわからずに、相変わらず幸せそうな二人を見るだけだったが、乱馬はあるところを指差す。

「ここ――」

そこには、賞金五十万円の文字。

「えぇっ!? こんなに!?」
「……なびきのヤツ、最近羽振りがいいとは思っていたが……」

乱馬はそう言うと、しばしの後、ニヤリと笑った。

「これ、俺たちにも貰う権利あるよな? モデル代として」
「え? それは……」

確かに乱馬の言う"権利"はあるが――

「――でも、あのおねえちゃんよ。一筋縄でいかないと思うけど」

今までの経験上、なびきはびた一文出した試しはない。
よく勝手に乱馬共々運動部に借り出されることがあった時でさえ、借り出された本人の懐に入ったことなど、ない。
本来、そんなことがあってはならないのだが。
とにかく、どんな正論でも、理不尽な答えて丸め込むのが、なびき。
そして姉妹であっても容赦ない。

とはいえ――
「どう合成したのか知らないけど、本人の許可なく撮ったんだから――とりあえず文句は言えるよね。それに言いがかつけられて、迷惑も被ってるんだし!!」

あまりにも身に覚えがないことで、トラブルに巻き添えほど腹の立つことはない。
言葉にすると、段々怒りが心頭し始めるあかね。

「そうだぜ! いつも俺たちばっかり損してられねー! いいか、あかね。今日こそはなびきにガツンと言ってやろうぜ!」
「そ、そうよね! うん、頑張ろう!!」

そして、この写真のことも聞き出さねばならない。

乱馬とあかねは、打倒なびきを掲げながら、二人並んで再び歩き始めた。





NEXT
「ったくーっ! あかねのヤツ、一体どこまで買い物に行ってんだ?」

きょろきょろと視線を動かし、ブツブツ文句を言いながら軽々と屋根をつたう。
飛ぶ度に特徴的なおさげを跳ねさせながら、人間離れした動きを見せるのは、乱馬。
乱馬は今、買い物に出たまま戻って来ないあかねを捜しに出ていた。

「高校生にもなって、買い物が遅いから探しに行く…なんてねーだろ……」

一時間程前、かすみに頼まれて買い物に出たあかね。
歩いて十分も掛からない所に簡単な買い物をしに行ったと思えば確かに少し遅いが、しかしちょっとした寄り道もあるだろうし、友人に会ったのかもしれない。
そうすれば多少の足止めはあるはず。
だが、「子供でもねーだろーっ!」という反論はあかねの父――早雲の妖怪変化の前では掻き消された。

しぶしぶ家を出て、とりあえずいつものスーパーに向かい、店内を探した。
すぐに見つかるだろうと思っていたが、姿はなかった。
しかし、偶然出口で出会った近所のおばさんがあかねを見かけ、もう買い物を済ませたことを告げてくれたことで、既に家路に向かっている情報を掴むことが出来た。
と言うのに、見当たらない。
(……面倒な事に巻き込まれて無いといいけど……)
ふっと、そんな風に思い、ひょいひょいと相変わらず屋根を渡っていると――

「待つね! あかねっ!」
「逃げるなんて、卑怯やでっ!」
「天道あかねっ、正々堂々来なさい!」
「だからっあたしは急いでいるの!!」

「………………………………」

願い虚しく、遠くから騒がしい声が聞こえた。
見事、乱馬の予感は的中。
あかねは一番関わって欲しくなかった、三人に追いかけられていた。

乱馬は小さくため息をつく。
大荷物であるあかねでは、あの三人から逃げるのは至難の技。
乱馬はあかねが丁度曲がり角に差し掛かった時、三人に見つからない様に、あかねを助けるべく横へ着地した。

「よっあかねっ! 何してんだ?」
「っ! 乱馬っ! …見たら判るでしょ!! …ったく誰のせいで…」

あかねは軽く乱馬を睨むと、そう言い放った。
買い物袋が邪魔してか、あかねは走り難そうにし、息も上がっている。
何故追いかけられているのか――自身のこと以外にないであろうが、気になるところ。
しかし、そんなことしていては、三人があっと言う間に追いついてしまう。
その前に三人から逃れなければ――ならば、道はただ一つしかない。
乱馬はあかねから買い物袋を取り上げ、腕にかけると――
「あかね、口、閉じとけよ」
「え? ……って、きゃっ!!!」
あかねに有無を言わさず、あかねを抱きかかえると、乱馬は屋根に飛んだ。

「乱馬っ!」
「乱ちゃん!」
「乱馬様っ!」

丁度その時、三人も曲がり角に差し掛かり、乱馬の姿を認めた。
そしていつもの様に叫びながら、屋根に上り、追って来た。

「いいとこに来たね、乱馬っ! 説明してもらおうか!」
「そやっ一体それはどういうことや!」
「天道あかねに嵌められて…お可哀相そうな乱馬様っ!」

「あん? 何言ってんだあいつ等?」
追いかけながら、すごい形相での言葉に、唖然とする乱馬。
来たばかりの乱馬に、いきなり説明だと言われても、意味がわかるはずもない。
わかりたくもないだろうが――。

「訳わかんねーよ!! 晩飯がかかってんだから、またな!!」

とりあえず、その恐ろしいほどの形相から逃げよう、そう思った乱馬は屋根を飛ぶスピードを上げた。





NEXT
「あかねっ!」「あかねちゃんっ!」「天道あかねっ!」
「説明するね!」「説明しぃ!」「説明なさい!」

シャンプー、右京、小太刀――よく見る構図に、よく聞く台詞。
いつもなら、この台詞は乱馬に向けられるけど、今日のターゲットはあかねらしい。
「何なのよ……一体?」
出くわしてしまったトラブルに、あかねは盛大なため息をついた。


晩ご飯の材料で足りないものがあり、姉のかすみに頼まれて、買い物に出ての帰り道。
頼まれた以上に――秋のお菓子の新作など――つい買って両手が埋まり荷物が重かったが、色々な収穫があったために楽しげな足取りでいたあかね。
だが、突然目の前にタイミングよく揃って登場した三人にテンションをすっかり落とされた。
そして、いきなり「説明を!」と言われても訳がわからない。

「何なのも、何もないね!?」
「そや、抜け駆けはいかんやろ、あかねちゃん?」
「全く憎憎憎ーですわっ!」

しかし、あかねの問いに、返って来たのはこれであり、三人の話の主旨は全く掴めない。
尤も、今まで巻き込まれても、納得の行く説明など無かったが。
(どうせ、乱馬のこと。あたしと何かある訳無いのに……)
あかねは再びため息を、小さくついた。


あかねと乱馬は相変わらず喧嘩の毎日を送っていた。
そして相変わらずといえば、乱馬の優柔不断さも抜けてないので、祝言騒動があった後も、変わらずこの三人に追いかけられている。
何を考えているのかわからない、乱馬。
それを知りたいけど――反面、はっきりさせるのが怖い様な、複雑な想いもある。
故に、呪泉洞では感じた乱馬からの気持ちは何だったのか――あかねは何度もそんなことを考えては、思考の渦に取り込まれていた。
わからない乱馬の気持ち。
だというのに、理不尽にもトラブルに巻き込まれることに、急激に苛立ちを感じた。

「だからっ…何の用なのよっ! 訳がわからないわ! 乱馬のことなんかあたしに聞いてもさっぱりわからないわよ! 巻き込むのもいい加減にして頂戴!!」

まともに取り合って貰うことなど期待していないが、言わずにはおれない言葉。
すると右京から鋭い視線を向けられたと思うと、雑誌が投げられ、足元に落ちた。

「まだとぼけるんか? 見てみぃ!」

拾い上げた表紙には"投稿写真"と、いかにも怪しげな名前。
三人の厳しい視線を受けながら、表紙を開こうとすると、何度も見てくせがついているのか、自然とページが分かれた。





「なっ!!」





見た瞬間、目を見開きながら大きな声を上げる、あかね。

”優秀賞:幸せの瞬間 写真:天道なびき”

そこにはあかねが乱馬に膝枕している、シーンが映ってあった。
恋人たちの決定的瞬間――などと、訳のわからないコンテストタイトルに投稿されてあり、全く身に覚えがない。

だが――
(あたし…本当に幸せそうに乱馬の頭を撫でている。乱馬も気持ち良さそうに寝てるし)
自分で思うのもなんだけど――と言い訳しつつ感じるのは、幸せそうな二人。

「あかね…何、ニヤけてるね!」

思わず表情が緩んでいたらしく、言われて気づいたあかねは、わざとらしく咳払いをしながら、表情を改めて三人を見据え、「こんなの――」知らない、と言おうとした。
が、言葉は阻まれた。

「言っとくけどなぁ、ウチとやったらきっと大賞やで!!」
「右京、何を仰いますの!? 私と乱馬様なら、ですわっ!」
「乱馬は、右京にも小太刀にも膝枕頼まないね!」
「なんやてーっ!!」
「なんですってー!!」

「………」

確か、あかねを責めていた――だが、責めようとしながら自分たちの言葉で勝手に険悪になりあう三人。
(馬鹿馬鹿しい……)
ヒートアップしては益々ひどい目に合うのは見えているので、あかねはここぞとばかりに、逃げようとした。
天道道場跡取として逃げるのは癪ではあるが、常識が通じない相手ばかりであり、何よりこの写真のシチュエーションが思い出せないのでは、どうしようもない。
姉なびきに問い詰めなければ――

「ご勝手に…」
あかねは小さく呟くと歩き出した。

「待つね!」
しかし簡単に逃げられるはずなどなく、目ざとい三人は先ほどの言い合いを忘れたかのように、腕組みをして斜めに見据えるという気の合った立ち方であかねに視線を向けていた。

「そや、誰が大賞かは後で、や。それより…」
「あかねに説明してほしいね! この写真――」
「この合成写真をっ!」

じりじりと詰め寄り、責める右京とシャンプーだったが――しかし最後の小太刀の言葉が意外だったのか、「ご、合成!?」二人は声を揃えて驚いた。
それにあかねも目を見開く。

(成る程! おねえちゃんなら、それも有りえる……)

なびきの執念――このコンテスト、見たところによると大賞に百万円が贈られるらしく、それを思えばどんな手を使うかわからない。
自分の姉でありながら、小太刀の意見に賛同しそうになってしまう。

「合成…? それは有り得るかもなぁ」
「でも、それなら益々あかね汚いね!!」

しかし、シャンプーと右京の声に、納得している場合ではないことに気づく。
小太刀の発言で勝手に益々盛り上がっている三人は、合成という手に、卑怯だと今にも襲ってきそうな剣幕に変わった。
卑怯なのは三人の専売特許とも言えるというのに、他人には厳しいらしい。
話を聞く気は全くなさそうであり――乱馬でも逃げるのが大変な三人。
しかもあかねは買い物袋を持っており状況は良くない。

「仕方ないわね…」

ぎゅっと力を入れると、あかねは気合を入れた。





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