らんま1/2の二次創作&日々の徒然なること…? |
vitamin+ |
「ったくーっ! あかねのヤツ、一体どこまで買い物に行ってんだ?」
きょろきょろと視線を動かし、ブツブツ文句を言いながら軽々と屋根をつたう。
飛ぶ度に特徴的なおさげを跳ねさせながら、人間離れした動きを見せるのは、乱馬。
乱馬は今、買い物に出たまま戻って来ないあかねを捜しに出ていた。
「高校生にもなって、買い物が遅いから探しに行く…なんてねーだろ……」
一時間程前、かすみに頼まれて買い物に出たあかね。
歩いて十分も掛からない所に簡単な買い物をしに行ったと思えば確かに少し遅いが、しかしちょっとした寄り道もあるだろうし、友人に会ったのかもしれない。
そうすれば多少の足止めはあるはず。
だが、「子供でもねーだろーっ!」という反論はあかねの父――早雲の妖怪変化の前では掻き消された。
しぶしぶ家を出て、とりあえずいつものスーパーに向かい、店内を探した。
すぐに見つかるだろうと思っていたが、姿はなかった。
しかし、偶然出口で出会った近所のおばさんがあかねを見かけ、もう買い物を済ませたことを告げてくれたことで、既に家路に向かっている情報を掴むことが出来た。
と言うのに、見当たらない。
(……面倒な事に巻き込まれて無いといいけど……)
ふっと、そんな風に思い、ひょいひょいと相変わらず屋根を渡っていると――
「待つね! あかねっ!」
「逃げるなんて、卑怯やでっ!」
「天道あかねっ、正々堂々来なさい!」
「だからっあたしは急いでいるの!!」
「………………………………」
願い虚しく、遠くから騒がしい声が聞こえた。
見事、乱馬の予感は的中。
あかねは一番関わって欲しくなかった、三人に追いかけられていた。
乱馬は小さくため息をつく。
大荷物であるあかねでは、あの三人から逃げるのは至難の技。
乱馬はあかねが丁度曲がり角に差し掛かった時、三人に見つからない様に、あかねを助けるべく横へ着地した。
「よっあかねっ! 何してんだ?」
「っ! 乱馬っ! …見たら判るでしょ!! …ったく誰のせいで…」
あかねは軽く乱馬を睨むと、そう言い放った。
買い物袋が邪魔してか、あかねは走り難そうにし、息も上がっている。
何故追いかけられているのか――自身のこと以外にないであろうが、気になるところ。
しかし、そんなことしていては、三人があっと言う間に追いついてしまう。
その前に三人から逃れなければ――ならば、道はただ一つしかない。
乱馬はあかねから買い物袋を取り上げ、腕にかけると――
「あかね、口、閉じとけよ」
「え? ……って、きゃっ!!!」
あかねに有無を言わさず、あかねを抱きかかえると、乱馬は屋根に飛んだ。
「乱馬っ!」
「乱ちゃん!」
「乱馬様っ!」
丁度その時、三人も曲がり角に差し掛かり、乱馬の姿を認めた。
そしていつもの様に叫びながら、屋根に上り、追って来た。
「いいとこに来たね、乱馬っ! 説明してもらおうか!」
「そやっ一体それはどういうことや!」
「天道あかねに嵌められて…お可哀相そうな乱馬様っ!」
「あん? 何言ってんだあいつ等?」
追いかけながら、すごい形相での言葉に、唖然とする乱馬。
来たばかりの乱馬に、いきなり説明だと言われても、意味がわかるはずもない。
わかりたくもないだろうが――。
「訳わかんねーよ!! 晩飯がかかってんだから、またな!!」
とりあえず、その恐ろしいほどの形相から逃げよう、そう思った乱馬は屋根を飛ぶスピードを上げた。
きょろきょろと視線を動かし、ブツブツ文句を言いながら軽々と屋根をつたう。
飛ぶ度に特徴的なおさげを跳ねさせながら、人間離れした動きを見せるのは、乱馬。
乱馬は今、買い物に出たまま戻って来ないあかねを捜しに出ていた。
「高校生にもなって、買い物が遅いから探しに行く…なんてねーだろ……」
一時間程前、かすみに頼まれて買い物に出たあかね。
歩いて十分も掛からない所に簡単な買い物をしに行ったと思えば確かに少し遅いが、しかしちょっとした寄り道もあるだろうし、友人に会ったのかもしれない。
そうすれば多少の足止めはあるはず。
だが、「子供でもねーだろーっ!」という反論はあかねの父――早雲の妖怪変化の前では掻き消された。
しぶしぶ家を出て、とりあえずいつものスーパーに向かい、店内を探した。
すぐに見つかるだろうと思っていたが、姿はなかった。
しかし、偶然出口で出会った近所のおばさんがあかねを見かけ、もう買い物を済ませたことを告げてくれたことで、既に家路に向かっている情報を掴むことが出来た。
と言うのに、見当たらない。
(……面倒な事に巻き込まれて無いといいけど……)
ふっと、そんな風に思い、ひょいひょいと相変わらず屋根を渡っていると――
「待つね! あかねっ!」
「逃げるなんて、卑怯やでっ!」
「天道あかねっ、正々堂々来なさい!」
「だからっあたしは急いでいるの!!」
「………………………………」
願い虚しく、遠くから騒がしい声が聞こえた。
見事、乱馬の予感は的中。
あかねは一番関わって欲しくなかった、三人に追いかけられていた。
乱馬は小さくため息をつく。
大荷物であるあかねでは、あの三人から逃げるのは至難の技。
乱馬はあかねが丁度曲がり角に差し掛かった時、三人に見つからない様に、あかねを助けるべく横へ着地した。
「よっあかねっ! 何してんだ?」
「っ! 乱馬っ! …見たら判るでしょ!! …ったく誰のせいで…」
あかねは軽く乱馬を睨むと、そう言い放った。
買い物袋が邪魔してか、あかねは走り難そうにし、息も上がっている。
何故追いかけられているのか――自身のこと以外にないであろうが、気になるところ。
しかし、そんなことしていては、三人があっと言う間に追いついてしまう。
その前に三人から逃れなければ――ならば、道はただ一つしかない。
乱馬はあかねから買い物袋を取り上げ、腕にかけると――
「あかね、口、閉じとけよ」
「え? ……って、きゃっ!!!」
あかねに有無を言わさず、あかねを抱きかかえると、乱馬は屋根に飛んだ。
「乱馬っ!」
「乱ちゃん!」
「乱馬様っ!」
丁度その時、三人も曲がり角に差し掛かり、乱馬の姿を認めた。
そしていつもの様に叫びながら、屋根に上り、追って来た。
「いいとこに来たね、乱馬っ! 説明してもらおうか!」
「そやっ一体それはどういうことや!」
「天道あかねに嵌められて…お可哀相そうな乱馬様っ!」
「あん? 何言ってんだあいつ等?」
追いかけながら、すごい形相での言葉に、唖然とする乱馬。
来たばかりの乱馬に、いきなり説明だと言われても、意味がわかるはずもない。
わかりたくもないだろうが――。
「訳わかんねーよ!! 晩飯がかかってんだから、またな!!」
とりあえず、その恐ろしいほどの形相から逃げよう、そう思った乱馬は屋根を飛ぶスピードを上げた。
⇒NEXT
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「あかねっ!」「あかねちゃんっ!」「天道あかねっ!」
「説明するね!」「説明しぃ!」「説明なさい!」
シャンプー、右京、小太刀――よく見る構図に、よく聞く台詞。
いつもなら、この台詞は乱馬に向けられるけど、今日のターゲットはあかねらしい。
「何なのよ……一体?」
出くわしてしまったトラブルに、あかねは盛大なため息をついた。
晩ご飯の材料で足りないものがあり、姉のかすみに頼まれて、買い物に出ての帰り道。
頼まれた以上に――秋のお菓子の新作など――つい買って両手が埋まり荷物が重かったが、色々な収穫があったために楽しげな足取りでいたあかね。
だが、突然目の前にタイミングよく揃って登場した三人にテンションをすっかり落とされた。
そして、いきなり「説明を!」と言われても訳がわからない。
「何なのも、何もないね!?」
「そや、抜け駆けはいかんやろ、あかねちゃん?」
「全く憎憎憎ーですわっ!」
しかし、あかねの問いに、返って来たのはこれであり、三人の話の主旨は全く掴めない。
尤も、今まで巻き込まれても、納得の行く説明など無かったが。
(どうせ、乱馬のこと。あたしと何かある訳無いのに……)
あかねは再びため息を、小さくついた。
あかねと乱馬は相変わらず喧嘩の毎日を送っていた。
そして相変わらずといえば、乱馬の優柔不断さも抜けてないので、祝言騒動があった後も、変わらずこの三人に追いかけられている。
何を考えているのかわからない、乱馬。
それを知りたいけど――反面、はっきりさせるのが怖い様な、複雑な想いもある。
故に、呪泉洞では感じた乱馬からの気持ちは何だったのか――あかねは何度もそんなことを考えては、思考の渦に取り込まれていた。
わからない乱馬の気持ち。
だというのに、理不尽にもトラブルに巻き込まれることに、急激に苛立ちを感じた。
「だからっ…何の用なのよっ! 訳がわからないわ! 乱馬のことなんかあたしに聞いてもさっぱりわからないわよ! 巻き込むのもいい加減にして頂戴!!」
まともに取り合って貰うことなど期待していないが、言わずにはおれない言葉。
すると右京から鋭い視線を向けられたと思うと、雑誌が投げられ、足元に落ちた。
「まだとぼけるんか? 見てみぃ!」
拾い上げた表紙には"投稿写真"と、いかにも怪しげな名前。
三人の厳しい視線を受けながら、表紙を開こうとすると、何度も見てくせがついているのか、自然とページが分かれた。
「なっ!!」
見た瞬間、目を見開きながら大きな声を上げる、あかね。
”優秀賞:幸せの瞬間 写真:天道なびき”
そこにはあかねが乱馬に膝枕している、シーンが映ってあった。
恋人たちの決定的瞬間――などと、訳のわからないコンテストタイトルに投稿されてあり、全く身に覚えがない。
だが――
(あたし…本当に幸せそうに乱馬の頭を撫でている。乱馬も気持ち良さそうに寝てるし)
自分で思うのもなんだけど――と言い訳しつつ感じるのは、幸せそうな二人。
「あかね…何、ニヤけてるね!」
思わず表情が緩んでいたらしく、言われて気づいたあかねは、わざとらしく咳払いをしながら、表情を改めて三人を見据え、「こんなの――」知らない、と言おうとした。
が、言葉は阻まれた。
「言っとくけどなぁ、ウチとやったらきっと大賞やで!!」
「右京、何を仰いますの!? 私と乱馬様なら、ですわっ!」
「乱馬は、右京にも小太刀にも膝枕頼まないね!」
「なんやてーっ!!」
「なんですってー!!」
「………」
確か、あかねを責めていた――だが、責めようとしながら自分たちの言葉で勝手に険悪になりあう三人。
(馬鹿馬鹿しい……)
ヒートアップしては益々ひどい目に合うのは見えているので、あかねはここぞとばかりに、逃げようとした。
天道道場跡取として逃げるのは癪ではあるが、常識が通じない相手ばかりであり、何よりこの写真のシチュエーションが思い出せないのでは、どうしようもない。
姉なびきに問い詰めなければ――
「ご勝手に…」
あかねは小さく呟くと歩き出した。
「待つね!」
しかし簡単に逃げられるはずなどなく、目ざとい三人は先ほどの言い合いを忘れたかのように、腕組みをして斜めに見据えるという気の合った立ち方であかねに視線を向けていた。
「そや、誰が大賞かは後で、や。それより…」
「あかねに説明してほしいね! この写真――」
「この合成写真をっ!」
じりじりと詰め寄り、責める右京とシャンプーだったが――しかし最後の小太刀の言葉が意外だったのか、「ご、合成!?」二人は声を揃えて驚いた。
それにあかねも目を見開く。
(成る程! おねえちゃんなら、それも有りえる……)
なびきの執念――このコンテスト、見たところによると大賞に百万円が贈られるらしく、それを思えばどんな手を使うかわからない。
自分の姉でありながら、小太刀の意見に賛同しそうになってしまう。
「合成…? それは有り得るかもなぁ」
「でも、それなら益々あかね汚いね!!」
しかし、シャンプーと右京の声に、納得している場合ではないことに気づく。
小太刀の発言で勝手に益々盛り上がっている三人は、合成という手に、卑怯だと今にも襲ってきそうな剣幕に変わった。
卑怯なのは三人の専売特許とも言えるというのに、他人には厳しいらしい。
話を聞く気は全くなさそうであり――乱馬でも逃げるのが大変な三人。
しかもあかねは買い物袋を持っており状況は良くない。
「仕方ないわね…」
ぎゅっと力を入れると、あかねは気合を入れた。
「説明するね!」「説明しぃ!」「説明なさい!」
シャンプー、右京、小太刀――よく見る構図に、よく聞く台詞。
いつもなら、この台詞は乱馬に向けられるけど、今日のターゲットはあかねらしい。
「何なのよ……一体?」
出くわしてしまったトラブルに、あかねは盛大なため息をついた。
晩ご飯の材料で足りないものがあり、姉のかすみに頼まれて、買い物に出ての帰り道。
頼まれた以上に――秋のお菓子の新作など――つい買って両手が埋まり荷物が重かったが、色々な収穫があったために楽しげな足取りでいたあかね。
だが、突然目の前にタイミングよく揃って登場した三人にテンションをすっかり落とされた。
そして、いきなり「説明を!」と言われても訳がわからない。
「何なのも、何もないね!?」
「そや、抜け駆けはいかんやろ、あかねちゃん?」
「全く憎憎憎ーですわっ!」
しかし、あかねの問いに、返って来たのはこれであり、三人の話の主旨は全く掴めない。
尤も、今まで巻き込まれても、納得の行く説明など無かったが。
(どうせ、乱馬のこと。あたしと何かある訳無いのに……)
あかねは再びため息を、小さくついた。
あかねと乱馬は相変わらず喧嘩の毎日を送っていた。
そして相変わらずといえば、乱馬の優柔不断さも抜けてないので、祝言騒動があった後も、変わらずこの三人に追いかけられている。
何を考えているのかわからない、乱馬。
それを知りたいけど――反面、はっきりさせるのが怖い様な、複雑な想いもある。
故に、呪泉洞では感じた乱馬からの気持ちは何だったのか――あかねは何度もそんなことを考えては、思考の渦に取り込まれていた。
わからない乱馬の気持ち。
だというのに、理不尽にもトラブルに巻き込まれることに、急激に苛立ちを感じた。
「だからっ…何の用なのよっ! 訳がわからないわ! 乱馬のことなんかあたしに聞いてもさっぱりわからないわよ! 巻き込むのもいい加減にして頂戴!!」
まともに取り合って貰うことなど期待していないが、言わずにはおれない言葉。
すると右京から鋭い視線を向けられたと思うと、雑誌が投げられ、足元に落ちた。
「まだとぼけるんか? 見てみぃ!」
拾い上げた表紙には"投稿写真"と、いかにも怪しげな名前。
三人の厳しい視線を受けながら、表紙を開こうとすると、何度も見てくせがついているのか、自然とページが分かれた。
「なっ!!」
見た瞬間、目を見開きながら大きな声を上げる、あかね。
”優秀賞:幸せの瞬間 写真:天道なびき”
そこにはあかねが乱馬に膝枕している、シーンが映ってあった。
恋人たちの決定的瞬間――などと、訳のわからないコンテストタイトルに投稿されてあり、全く身に覚えがない。
だが――
(あたし…本当に幸せそうに乱馬の頭を撫でている。乱馬も気持ち良さそうに寝てるし)
自分で思うのもなんだけど――と言い訳しつつ感じるのは、幸せそうな二人。
「あかね…何、ニヤけてるね!」
思わず表情が緩んでいたらしく、言われて気づいたあかねは、わざとらしく咳払いをしながら、表情を改めて三人を見据え、「こんなの――」知らない、と言おうとした。
が、言葉は阻まれた。
「言っとくけどなぁ、ウチとやったらきっと大賞やで!!」
「右京、何を仰いますの!? 私と乱馬様なら、ですわっ!」
「乱馬は、右京にも小太刀にも膝枕頼まないね!」
「なんやてーっ!!」
「なんですってー!!」
「………」
確か、あかねを責めていた――だが、責めようとしながら自分たちの言葉で勝手に険悪になりあう三人。
(馬鹿馬鹿しい……)
ヒートアップしては益々ひどい目に合うのは見えているので、あかねはここぞとばかりに、逃げようとした。
天道道場跡取として逃げるのは癪ではあるが、常識が通じない相手ばかりであり、何よりこの写真のシチュエーションが思い出せないのでは、どうしようもない。
姉なびきに問い詰めなければ――
「ご勝手に…」
あかねは小さく呟くと歩き出した。
「待つね!」
しかし簡単に逃げられるはずなどなく、目ざとい三人は先ほどの言い合いを忘れたかのように、腕組みをして斜めに見据えるという気の合った立ち方であかねに視線を向けていた。
「そや、誰が大賞かは後で、や。それより…」
「あかねに説明してほしいね! この写真――」
「この合成写真をっ!」
じりじりと詰め寄り、責める右京とシャンプーだったが――しかし最後の小太刀の言葉が意外だったのか、「ご、合成!?」二人は声を揃えて驚いた。
それにあかねも目を見開く。
(成る程! おねえちゃんなら、それも有りえる……)
なびきの執念――このコンテスト、見たところによると大賞に百万円が贈られるらしく、それを思えばどんな手を使うかわからない。
自分の姉でありながら、小太刀の意見に賛同しそうになってしまう。
「合成…? それは有り得るかもなぁ」
「でも、それなら益々あかね汚いね!!」
しかし、シャンプーと右京の声に、納得している場合ではないことに気づく。
小太刀の発言で勝手に益々盛り上がっている三人は、合成という手に、卑怯だと今にも襲ってきそうな剣幕に変わった。
卑怯なのは三人の専売特許とも言えるというのに、他人には厳しいらしい。
話を聞く気は全くなさそうであり――乱馬でも逃げるのが大変な三人。
しかもあかねは買い物袋を持っており状況は良くない。
「仕方ないわね…」
ぎゅっと力を入れると、あかねは気合を入れた。
⇒NEXT
ひとつ屋根の下に贈る5つのお題 1(連作/乱あ交互視点)
1 これは誰かの陰謀か?
2 ぎりぎりの境界線
3 意外すぎた真実
4 戸惑いを断ち切れ
5 さりげなく、告白
ひとつ屋根の下に贈る5つのお題 2
1 ドアを開ければヤツがいる
2 買い物に行こう!
3 "今更"
4 背中あわせ
5 教えて、君の言葉で
1 これは誰かの陰謀か?
2 ぎりぎりの境界線
3 意外すぎた真実
4 戸惑いを断ち切れ
5 さりげなく、告白
ひとつ屋根の下に贈る5つのお題 2
1 ドアを開ければヤツがいる
2 買い物に行こう!
3 "今更"
4 背中あわせ
5 教えて、君の言葉で
配布サイト:tricky voice サマ
「ここ、来てみたかったのよね! 何にしようかしら~」
楽しげなあかねの声を耳にしながら、乱馬はため息をつきながらメニューを広げていた。
ここは天道家から十分程歩いた場所、住宅地から少し離れた場所にある、CAFE。
最近出来たばかりで、近い場所にありながら、しかし中々来ることが出来なかった。
あかねはしきりに行ってみたいと繰り返していたが、一緒に行くことを乱馬はずっと拒んでいたから。
というのも、何せ、この内装、カーテンやテーブルクロスなどはレースやピンクでまとめられており、置かれた小物もぬいぐるみやら、とにかく女の子らしい雰囲気で、男が入るには少々、否、かなり勇気がいる。
だから――のハズだったが――
――ねぇ、乱馬。晩ご飯、食べに行かない?
――あの店、行きたいの。ランチだけじゃなく、夜のメニューもあるのよ!
帰宅して、着替えを済ませたあかねは、居間にいる乱馬にそう声をかけて来た。
あの店――それだけでどの店を指すのかすぐにわかり、内装を思い出して思わず顔を歪ませると、あかねは見て、と紙を差し出した。
その紙には、OPEN三ヵ月記念らしく、先着で食後にお好きなデザートをプレゼントとあった。
――あのお店のパフェ、評判なの知ってるでしょ。だから、ね。
噂は聞いており、そして値段が意外と張ることもありどんなものかと興味はあった。
それに後押しされたように頷いた乱馬だが、別に好物のパフェだけに釣られたわけではない。
密かに晩ご飯にも頭を抱えていた乱馬だっただけに、あかねの誘いを断ることなど出来はしなかった。
あかねの料理は……という出来なので。
二人きりだということ、そして色んな意味で安心してしまったこともあってのことだが、それは秘密である。
(…それにしても………俺だけか? こんなに意識してんの)
悶々と考えつつも、平静を装う自分に対して、いつもと変わらない様子のあかね。
一時、よく何かにつけてこうして二人にされたこともあり、慣れた、と言えばおかしい話だが、今までやり過ごしてきた時と変わらない。
が、あかねはそうでも、自分は違う。
もう少しこのままで――今まではそう願っていたが、変わりたい、今はそう願う気持ちが大きく占めていた。
誰にでも優しく、日に日に綺麗になるあかねに視線を向ける輩は増える一方。
そんな中でも、乱馬は許婚という立場のために、誰よりも二人の距離を近くさせているけれど、そんな絆で傍にいることを欲しているわけではない。
そんなあかねの心が、全てが欲しいのだ。
強くなる独占欲。
しかし、誰よりも大事で、大事にしたいからこそ、こんな仕組まれた形で何かが――だけは避けたかった。
だから、この環境は、乱馬にとっては怖かった。
だのに、こんな風に思うのは自分だけなのか、そう思うと落ち着かない気持ちになる。
全くの無防備さで近づかれたりすると堪らない。
かと言って、妙に意識しすぎてギクシャクするよりもいい気もするが――
(はぁ……)
矛盾した気持ちをぐるぐると巡らせながら、小さくため息をつき、そしてあかねの様子を伺おうとメニューからちらりと視線を僅かに上げる。
(………あれ……?)
と、慌てて視線を落としたあかねがいた――気がした。
「えぇっと……リゾットも捨てがたいけど、このパスタセットも良さそうよね」
唐突に出た、言葉。
相変わらず楽しげな声だが、しかし見えたその笑顔に少し違和感を覚える。
「…ねぇ、乱馬は何を食べるの?」
いつもなら、真っ直ぐ見て話しかける、あかね。
しかし、今は視線を落としたまま、熱心そうにメニューを見つめる。
「…まだ、決めてねーけど、おめーは?」
「あたしも、まだ決めてない。でも……別にゆっくり決めればいいよね。だって時間はいっぱいあるし……」
その言葉に、心臓が、波打つ。
長い時間をどうすべきか――これからのことをふと浮かべ思い悩んでいると、ねぇ乱馬、とあかねは苦笑しながら顔を上げた。
「ズルイよね、みんな。いつもコソコソして。あたしたちなんか蚊帳の外」
「……あぁ」
唐突に変化したあかねの表情と今更な言葉の意味するところがわからず、戸惑いがちに答える。
「それに……信用されてないのよね……違う、諦め、かしら」
「え?」
ぽつりと呟くその言葉は段々小さくなり、最後の方は聞き取れなかった。
信用されてない――それは聞こえた乱馬だが、あかねの言わんとしている意味がやはりわからなかった。
首を傾げるが、そんな乱馬を他所にあかねは再びメニューに視線を落とした。
「何……」
意味と後に続いた言葉を問おうとしたが、しかし妙な議論に発展することを恐れ、開きかけた口を閉ざした。
あかねの言葉を反芻させながら、乱馬はあかねと同じ様に視線をメニューに落とす。
(……逆に変に信用されてるから、この状況下に置かれてるんじゃ……違うのか?)
わからない、その意味。
いくら考えても無駄だと思うと、そこから離れようと首を左右に振り、ちゃんと食べるものを決めようとメニューを眺めた。
楽しげなあかねの声を耳にしながら、乱馬はため息をつきながらメニューを広げていた。
ここは天道家から十分程歩いた場所、住宅地から少し離れた場所にある、CAFE。
最近出来たばかりで、近い場所にありながら、しかし中々来ることが出来なかった。
あかねはしきりに行ってみたいと繰り返していたが、一緒に行くことを乱馬はずっと拒んでいたから。
というのも、何せ、この内装、カーテンやテーブルクロスなどはレースやピンクでまとめられており、置かれた小物もぬいぐるみやら、とにかく女の子らしい雰囲気で、男が入るには少々、否、かなり勇気がいる。
だから――のハズだったが――
――ねぇ、乱馬。晩ご飯、食べに行かない?
――あの店、行きたいの。ランチだけじゃなく、夜のメニューもあるのよ!
帰宅して、着替えを済ませたあかねは、居間にいる乱馬にそう声をかけて来た。
あの店――それだけでどの店を指すのかすぐにわかり、内装を思い出して思わず顔を歪ませると、あかねは見て、と紙を差し出した。
その紙には、OPEN三ヵ月記念らしく、先着で食後にお好きなデザートをプレゼントとあった。
――あのお店のパフェ、評判なの知ってるでしょ。だから、ね。
噂は聞いており、そして値段が意外と張ることもありどんなものかと興味はあった。
それに後押しされたように頷いた乱馬だが、別に好物のパフェだけに釣られたわけではない。
密かに晩ご飯にも頭を抱えていた乱馬だっただけに、あかねの誘いを断ることなど出来はしなかった。
あかねの料理は……という出来なので。
二人きりだということ、そして色んな意味で安心してしまったこともあってのことだが、それは秘密である。
(…それにしても………俺だけか? こんなに意識してんの)
悶々と考えつつも、平静を装う自分に対して、いつもと変わらない様子のあかね。
一時、よく何かにつけてこうして二人にされたこともあり、慣れた、と言えばおかしい話だが、今までやり過ごしてきた時と変わらない。
が、あかねはそうでも、自分は違う。
もう少しこのままで――今まではそう願っていたが、変わりたい、今はそう願う気持ちが大きく占めていた。
誰にでも優しく、日に日に綺麗になるあかねに視線を向ける輩は増える一方。
そんな中でも、乱馬は許婚という立場のために、誰よりも二人の距離を近くさせているけれど、そんな絆で傍にいることを欲しているわけではない。
そんなあかねの心が、全てが欲しいのだ。
強くなる独占欲。
しかし、誰よりも大事で、大事にしたいからこそ、こんな仕組まれた形で何かが――だけは避けたかった。
だから、この環境は、乱馬にとっては怖かった。
だのに、こんな風に思うのは自分だけなのか、そう思うと落ち着かない気持ちになる。
全くの無防備さで近づかれたりすると堪らない。
かと言って、妙に意識しすぎてギクシャクするよりもいい気もするが――
(はぁ……)
矛盾した気持ちをぐるぐると巡らせながら、小さくため息をつき、そしてあかねの様子を伺おうとメニューからちらりと視線を僅かに上げる。
(………あれ……?)
と、慌てて視線を落としたあかねがいた――気がした。
「えぇっと……リゾットも捨てがたいけど、このパスタセットも良さそうよね」
唐突に出た、言葉。
相変わらず楽しげな声だが、しかし見えたその笑顔に少し違和感を覚える。
「…ねぇ、乱馬は何を食べるの?」
いつもなら、真っ直ぐ見て話しかける、あかね。
しかし、今は視線を落としたまま、熱心そうにメニューを見つめる。
「…まだ、決めてねーけど、おめーは?」
「あたしも、まだ決めてない。でも……別にゆっくり決めればいいよね。だって時間はいっぱいあるし……」
その言葉に、心臓が、波打つ。
長い時間をどうすべきか――これからのことをふと浮かべ思い悩んでいると、ねぇ乱馬、とあかねは苦笑しながら顔を上げた。
「ズルイよね、みんな。いつもコソコソして。あたしたちなんか蚊帳の外」
「……あぁ」
唐突に変化したあかねの表情と今更な言葉の意味するところがわからず、戸惑いがちに答える。
「それに……信用されてないのよね……違う、諦め、かしら」
「え?」
ぽつりと呟くその言葉は段々小さくなり、最後の方は聞き取れなかった。
信用されてない――それは聞こえた乱馬だが、あかねの言わんとしている意味がやはりわからなかった。
首を傾げるが、そんな乱馬を他所にあかねは再びメニューに視線を落とした。
「何……」
意味と後に続いた言葉を問おうとしたが、しかし妙な議論に発展することを恐れ、開きかけた口を閉ざした。
あかねの言葉を反芻させながら、乱馬はあかねと同じ様に視線をメニューに落とす。
(……逆に変に信用されてるから、この状況下に置かれてるんじゃ……違うのか?)
わからない、その意味。
いくら考えても無駄だと思うと、そこから離れようと首を左右に振り、ちゃんと食べるものを決めようとメニューを眺めた。
ひとつ屋根の下に贈る5つのお題1 より 配布サイト:tricky voice サマ
「今日、俺たちだけだと」
「そうなるわね……どうしよう……」
晩ご飯……言いながら、あかねは部屋に向かうために、階段を上った。
「はぁ~……。もう、信っじられない!!」
自室に入ると同時に、あかねはかばんを床に放ると、制服のままベッドに倒れた。
ベッドのスプリングが軽く弾み、身が少し浮くが、再び沈むと身動き一つさせず、視線だけベッドを寄せている壁に向け、意味もなくじっと見つめる。
(…普通に言えたよね)
そして先ほどのことを反芻した。
――ただいまーーっ!
明日から三連休。
あかねは楽しい休みを思い浮かべながら、うきうきした気分で元気よく戸を開けた。
が、戸を開けて目にした玄関に、そしていつもなら、小走りでやって来る姉のかすみや乱馬の母のどかの出迎えのないことに、あかねは嫌な予感を覚えた。
この時間は、天道家ならば、誰かしら必ずいるはずだった。
親たちは道場が――仕事にもならないが――仕事場で、姉のかすみは家事をする時間。
なのに、物音一つなく、そして玄関は靴一つのみ。
(…まさか)
そんな気持ちを抱きながら、靴を脱ぎ、階段を上りかけたところで「あかね」と声がかかった。
それは、居候兼許婚の乱馬の声。
靴は彼の分のみだったから、いるだろうと――彼しかいないであろう――と気づいていた。
――なぁ、知ってたか? 皆、泊まりだったってこと
呆れと諦めを含んだその言葉。
(…や、やっぱりーっ!?)
あかねの予感は的中した。
それは世間一般的に考えると、非常識も甚だしい。
しかし、それが通用しないのが、自分たち家族。
常日頃から、あわよくば既成事実を・・・などと、両家の親が口を揃えて子の前で言う位で、そんな親は他には絶対にいない。
三連休ともなれば――何故気づかなかったのかと、自分の鈍さを呪わしく思う。
そして、乱馬は相変わらず何を考えているのかわからない、あかねはそう思った。
あかねは動揺のあまり、激しく波打つ心臓を押さえ、何とか平静を保ったつもりだった。
なのに、乱馬は、そんな重大なことをしれっと言いのけた。
振り返って見た表情も、何らいつもと変わらない。
故に、過剰に反応すると、変に意識していると思われてしまう。
――知るわけないでしょ…
あかねはそう言って、ふいと、視線を反らすと、階段に足を向けた。
――…今日、俺たちだけだと
とん、と足を踏み出したその時、出た改めての状況を示す時に出たその言葉に、あかねはどくん、と更に胸が弾むが、しかし、気にしないフリを装ってそれに返答した。
とても、顔を見て言えなかったが。
「はぁ~……どうしよう」
ごろん、と寝返りをうつと、天井を見つめる。
もちろん、晩ご飯のことなどではない。
先ほどのそれは咄嗟に出た、ごまかしの言葉であり、どうしようの意味は別の場所にある。
好きな人と二人っきり――嬉しいはずなのだが、しかしこのシチュエーションは今のあかねにとって複雑だった。
あかねは、意地っ張り許婚のラインをずっと保っていた。
今のあやふやな関係に、心地よさを感じることもある、なんて言ったら臆病かもしれないが、そのラインを超えることを、そして何かが変わってしまうのではないのかというのが怖かった。
何より、その想いを拒絶されることが――
好きだから、それ故に。
素直になれない、のではなく、素直にならない、ようにしていた。
けれど――
あかねは深いため息を吐くと、ベッドから身を起こした。
もし、乱馬自身が自分を想いそれを超えようとしてくれたら――とも思う。
(あたしったら何を……)
が、そう思ったあかねは苦笑すると、「あり得ないわ」小さく呟いた。
「そうなるわね……どうしよう……」
晩ご飯……言いながら、あかねは部屋に向かうために、階段を上った。
「はぁ~……。もう、信っじられない!!」
自室に入ると同時に、あかねはかばんを床に放ると、制服のままベッドに倒れた。
ベッドのスプリングが軽く弾み、身が少し浮くが、再び沈むと身動き一つさせず、視線だけベッドを寄せている壁に向け、意味もなくじっと見つめる。
(…普通に言えたよね)
そして先ほどのことを反芻した。
――ただいまーーっ!
明日から三連休。
あかねは楽しい休みを思い浮かべながら、うきうきした気分で元気よく戸を開けた。
が、戸を開けて目にした玄関に、そしていつもなら、小走りでやって来る姉のかすみや乱馬の母のどかの出迎えのないことに、あかねは嫌な予感を覚えた。
この時間は、天道家ならば、誰かしら必ずいるはずだった。
親たちは道場が――仕事にもならないが――仕事場で、姉のかすみは家事をする時間。
なのに、物音一つなく、そして玄関は靴一つのみ。
(…まさか)
そんな気持ちを抱きながら、靴を脱ぎ、階段を上りかけたところで「あかね」と声がかかった。
それは、居候兼許婚の乱馬の声。
靴は彼の分のみだったから、いるだろうと――彼しかいないであろう――と気づいていた。
――なぁ、知ってたか? 皆、泊まりだったってこと
呆れと諦めを含んだその言葉。
(…や、やっぱりーっ!?)
あかねの予感は的中した。
それは世間一般的に考えると、非常識も甚だしい。
しかし、それが通用しないのが、自分たち家族。
常日頃から、あわよくば既成事実を・・・などと、両家の親が口を揃えて子の前で言う位で、そんな親は他には絶対にいない。
三連休ともなれば――何故気づかなかったのかと、自分の鈍さを呪わしく思う。
そして、乱馬は相変わらず何を考えているのかわからない、あかねはそう思った。
あかねは動揺のあまり、激しく波打つ心臓を押さえ、何とか平静を保ったつもりだった。
なのに、乱馬は、そんな重大なことをしれっと言いのけた。
振り返って見た表情も、何らいつもと変わらない。
故に、過剰に反応すると、変に意識していると思われてしまう。
――知るわけないでしょ…
あかねはそう言って、ふいと、視線を反らすと、階段に足を向けた。
――…今日、俺たちだけだと
とん、と足を踏み出したその時、出た改めての状況を示す時に出たその言葉に、あかねはどくん、と更に胸が弾むが、しかし、気にしないフリを装ってそれに返答した。
とても、顔を見て言えなかったが。
「はぁ~……どうしよう」
ごろん、と寝返りをうつと、天井を見つめる。
もちろん、晩ご飯のことなどではない。
先ほどのそれは咄嗟に出た、ごまかしの言葉であり、どうしようの意味は別の場所にある。
好きな人と二人っきり――嬉しいはずなのだが、しかしこのシチュエーションは今のあかねにとって複雑だった。
あかねは、意地っ張り許婚のラインをずっと保っていた。
今のあやふやな関係に、心地よさを感じることもある、なんて言ったら臆病かもしれないが、そのラインを超えることを、そして何かが変わってしまうのではないのかというのが怖かった。
何より、その想いを拒絶されることが――
好きだから、それ故に。
素直になれない、のではなく、素直にならない、ようにしていた。
けれど――
あかねは深いため息を吐くと、ベッドから身を起こした。
もし、乱馬自身が自分を想いそれを超えようとしてくれたら――とも思う。
(あたしったら何を……)
が、そう思ったあかねは苦笑すると、「あり得ないわ」小さく呟いた。
ひとつ屋根の下に贈る5つのお題1 より 配布サイト:tricky voice サマ