らんま1/2の二次創作&日々の徒然なること…? |
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少しでも動けば、触れそうな距離。
背中に手を伸ばそうと、あかね自身の意思で近づいておきながら、躊躇う指先。
あと少しの勇気がいつも足りなくて、知ることが出来ない気持ち。
そのために、いつまでも何も変わらないことはわかっている。
けれども――
伸ばした手を拒絶されたら――
何より、ここにいることさえも疎まれていたら――
それが怖い。
「……おい?」
至近距離にいながら、行動も、言葉も何もないあかねに痺れを切らしたのか、かかった声。
思考の渦にとらわれていたあかねは、その声に我に返る。
自然と俯き加減になっていたらしい視線を上げると、乱馬の顔が少し、こちらに傾いていた。
乱馬の顔が全部見える訳ではないが、困った様な、照れた様な、複雑そうな表情が想像ついた。
「らしくねーな……気持ち悪ぃ」
視線を空へ戻しながら、紡がれた言葉は素っ気無いが、嫌がってない。
きっと。
(……誰のせいだと思ってんのよ)
少しムッとしながらも、その小さな怒りを飲み込む。
そんな言葉を吐けば、乱馬から自惚れた言葉が返ってくるのは、あかねには容易に想像がついた。
何より、らしくないと言えば、乱馬だってそれは一緒。
こんな時だからこそ、"らしい"も必要ならば――
「何よ、それはあんたで……しょ」
同時に、身を翻し、その背を倒れこむように乱馬の背にぶつけた。
あかねにかかる少しの衝撃。
「ぐえっ!! な、何すんだよ、あかね!」
思い切り衝撃がかかり、前のめりになったことで、柵がお腹にめりこんだろう乱馬。
小さな呻き声と非難の声が上がるが、あかねはそれを無視して、前のめりから姿勢を元に戻した乱馬の背にもたれたままの姿勢でいた。
「お、おい? な、何だよっ……」
「何が?」
「な、何がじゃねーよっ!!」
いやに冷静なあかねに対し、あたふたしながらも、身動きの取り様のなく、その場で固まる乱馬。
言葉なく、しばしじっとしていると、背中の触れている部分が次第に熱を持つ。
それは乱馬なのか、あかねなのか、どちらが熱いのかわからない。
手を伸ばすことをあんなに躊躇いながら、結果、指先で触れるよりも大胆な行動。
我ながら、勇気を盛大に使い切ったと、あかねは思った。
次第に鼓動が強く跳ね始め、ふわり、と風が二人を包む。
寒いはずのそれは、不思議と心地よかった。
「お、重いだろ」
ようやく、出た乱馬からの言葉。
気の利いたそれなど、期待はしてないし、その方が"らしい"と思うとあかねは小さく笑っていた。
「何だよ……」
「別に。鍛えてるくせに、情けないなぁ、と思って」
「う、うるせー……それとこれとは別だっ」
「一緒よ。あたし一人位、どーってことないでしょ!」
「どーってことある! だ、大体……おめー、前より重くなってねーか」
「……!!」
図星。
思いがけない言葉で、あかねの頬に、違う熱が持たれた。
しかし、それは乱馬の失礼な言葉に対してではない。
思い出した、つい最近の東風の言葉だった。
「あー重い! 重い!! おーもーいっ!!」
そんなことを知る由のない乱馬は、くやしくてあかねが言葉を失っていると、思っているだろう。
してやったりとばかりに、くくくっと笑うとその言葉を繰り返す。
楽しげな乱馬に、何と言ってやろうか――どんな反応をするだろうか、そう思いながら、あかねは口を開いた。
「……あんたのせいよ」
「はぁ? 何で俺のせいなんだよっ。太ったのを人のせいにすんなよ」
「嘘じゃないわ。ホントよ。……呪泉郷から戻って来て――」
「え……」
そこで、乱馬の背がぴくり、と反応する。
それは、今までと違った暗い声色。
勘違いしているのでは、と、あかねは慌てて言葉を続ける。
「あっ、あの、しばらく大人しくしてたら、太ったの。おば様のご飯もおねーちゃんのご飯も美味しいし、つい食べ過ぎるし、お菓子にも手が伸びちゃって……この間、東風先生もさすがに運動した方がいいって言われちゃった」
小さく笑うと、乱馬からも、「あぁ」と、つられたように笑いを含んだ言葉が返って来た。
「……大人しくってよりも、ダラダラしてたもんな」
余計な一言をつけて。
あかねが、うるさい、と背に体重をかけると、大げさな呻き声が響いた。
「そうそう、でねー、続きがあるんだけど……東風先生ったら、あたしが太ったの、乱馬にも責任があるって。乱馬が過保護過ぎるせいだって。愛されてるねーって」
「え゛っっ!?」
愛されてる――思い切り強調すると、勢いよく、振り向く乱馬。
その勢いに飛ばされて、あかねは前のめりになりそうになるが、「悪ぃっ」と咄嗟に伸ばされた乱馬の手が腰に周り、地面との衝撃になる所を、救ってくれた。
大きな手は、やはり頼もしく、温かい。
ほう、と安堵の溜息がしたと思うと、乱馬に姿勢を正されるあかね。
そこで、ようやく向かい合いになった。
「もうっ、何するのよ!」
危ないわね、と怒りを含んで非難しながら、視線を上げる。
「お、おめーがっ……!!」
すると、そこには顔も耳も真っ赤で、掴まれた手も――
恥ずかしさと困惑と、最初とは全く違った複雑な乱馬の表情と出会い、思った以上の反応に、あかねは思わずふきだした。
「なっ……!? て、てめー……からかったな!!」
「ち、違わよっ…で、でも……」
わなわな、と拳を震わせて、あかねを睨み付けるが、迫力はゼロ。
「あはは……そ、そんな真っ赤な顔ですごんでも――怖くないわよ!」
笑うあかねに、言い返す言葉が思いつかないのか、ムッとした表情でくるりと空へまたも視線を戻した乱馬。
こんな時、いつもなら恥ずかしさから逃げ出していた乱馬だが、その場に留まったまま、不機嫌な背中を見せる。
だが、その背中からは、負の気が少し消えていた。
背中に手を伸ばそうと、あかね自身の意思で近づいておきながら、躊躇う指先。
あと少しの勇気がいつも足りなくて、知ることが出来ない気持ち。
そのために、いつまでも何も変わらないことはわかっている。
けれども――
伸ばした手を拒絶されたら――
何より、ここにいることさえも疎まれていたら――
それが怖い。
「……おい?」
至近距離にいながら、行動も、言葉も何もないあかねに痺れを切らしたのか、かかった声。
思考の渦にとらわれていたあかねは、その声に我に返る。
自然と俯き加減になっていたらしい視線を上げると、乱馬の顔が少し、こちらに傾いていた。
乱馬の顔が全部見える訳ではないが、困った様な、照れた様な、複雑そうな表情が想像ついた。
「らしくねーな……気持ち悪ぃ」
視線を空へ戻しながら、紡がれた言葉は素っ気無いが、嫌がってない。
きっと。
(……誰のせいだと思ってんのよ)
少しムッとしながらも、その小さな怒りを飲み込む。
そんな言葉を吐けば、乱馬から自惚れた言葉が返ってくるのは、あかねには容易に想像がついた。
何より、らしくないと言えば、乱馬だってそれは一緒。
こんな時だからこそ、"らしい"も必要ならば――
「何よ、それはあんたで……しょ」
同時に、身を翻し、その背を倒れこむように乱馬の背にぶつけた。
あかねにかかる少しの衝撃。
「ぐえっ!! な、何すんだよ、あかね!」
思い切り衝撃がかかり、前のめりになったことで、柵がお腹にめりこんだろう乱馬。
小さな呻き声と非難の声が上がるが、あかねはそれを無視して、前のめりから姿勢を元に戻した乱馬の背にもたれたままの姿勢でいた。
「お、おい? な、何だよっ……」
「何が?」
「な、何がじゃねーよっ!!」
いやに冷静なあかねに対し、あたふたしながらも、身動きの取り様のなく、その場で固まる乱馬。
言葉なく、しばしじっとしていると、背中の触れている部分が次第に熱を持つ。
それは乱馬なのか、あかねなのか、どちらが熱いのかわからない。
手を伸ばすことをあんなに躊躇いながら、結果、指先で触れるよりも大胆な行動。
我ながら、勇気を盛大に使い切ったと、あかねは思った。
次第に鼓動が強く跳ね始め、ふわり、と風が二人を包む。
寒いはずのそれは、不思議と心地よかった。
「お、重いだろ」
ようやく、出た乱馬からの言葉。
気の利いたそれなど、期待はしてないし、その方が"らしい"と思うとあかねは小さく笑っていた。
「何だよ……」
「別に。鍛えてるくせに、情けないなぁ、と思って」
「う、うるせー……それとこれとは別だっ」
「一緒よ。あたし一人位、どーってことないでしょ!」
「どーってことある! だ、大体……おめー、前より重くなってねーか」
「……!!」
図星。
思いがけない言葉で、あかねの頬に、違う熱が持たれた。
しかし、それは乱馬の失礼な言葉に対してではない。
思い出した、つい最近の東風の言葉だった。
「あー重い! 重い!! おーもーいっ!!」
そんなことを知る由のない乱馬は、くやしくてあかねが言葉を失っていると、思っているだろう。
してやったりとばかりに、くくくっと笑うとその言葉を繰り返す。
楽しげな乱馬に、何と言ってやろうか――どんな反応をするだろうか、そう思いながら、あかねは口を開いた。
「……あんたのせいよ」
「はぁ? 何で俺のせいなんだよっ。太ったのを人のせいにすんなよ」
「嘘じゃないわ。ホントよ。……呪泉郷から戻って来て――」
「え……」
そこで、乱馬の背がぴくり、と反応する。
それは、今までと違った暗い声色。
勘違いしているのでは、と、あかねは慌てて言葉を続ける。
「あっ、あの、しばらく大人しくしてたら、太ったの。おば様のご飯もおねーちゃんのご飯も美味しいし、つい食べ過ぎるし、お菓子にも手が伸びちゃって……この間、東風先生もさすがに運動した方がいいって言われちゃった」
小さく笑うと、乱馬からも、「あぁ」と、つられたように笑いを含んだ言葉が返って来た。
「……大人しくってよりも、ダラダラしてたもんな」
余計な一言をつけて。
あかねが、うるさい、と背に体重をかけると、大げさな呻き声が響いた。
「そうそう、でねー、続きがあるんだけど……東風先生ったら、あたしが太ったの、乱馬にも責任があるって。乱馬が過保護過ぎるせいだって。愛されてるねーって」
「え゛っっ!?」
愛されてる――思い切り強調すると、勢いよく、振り向く乱馬。
その勢いに飛ばされて、あかねは前のめりになりそうになるが、「悪ぃっ」と咄嗟に伸ばされた乱馬の手が腰に周り、地面との衝撃になる所を、救ってくれた。
大きな手は、やはり頼もしく、温かい。
ほう、と安堵の溜息がしたと思うと、乱馬に姿勢を正されるあかね。
そこで、ようやく向かい合いになった。
「もうっ、何するのよ!」
危ないわね、と怒りを含んで非難しながら、視線を上げる。
「お、おめーがっ……!!」
すると、そこには顔も耳も真っ赤で、掴まれた手も――
恥ずかしさと困惑と、最初とは全く違った複雑な乱馬の表情と出会い、思った以上の反応に、あかねは思わずふきだした。
「なっ……!? て、てめー……からかったな!!」
「ち、違わよっ…で、でも……」
わなわな、と拳を震わせて、あかねを睨み付けるが、迫力はゼロ。
「あはは……そ、そんな真っ赤な顔ですごんでも――怖くないわよ!」
笑うあかねに、言い返す言葉が思いつかないのか、ムッとした表情でくるりと空へまたも視線を戻した乱馬。
こんな時、いつもなら恥ずかしさから逃げ出していた乱馬だが、その場に留まったまま、不機嫌な背中を見せる。
だが、その背中からは、負の気が少し消えていた。
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